この冊子は、世田谷区が発行している、『世田谷、認知症とともに生きる、みんなでアクションガイド』です。 まず始めに、この冊子の構成について、説明します。 大きさはA4サイズで、ページ数は表紙と裏表紙を合わせて28ページ、両面刷りとなっています。 それでは、この冊子の内容についての説明を始めます。 このページは、表紙部分になります。 1ページ 始めに、このガイドを手にしたあなたに向けてのメッセージです。 だれもが、日、いちにち、そして長い年月を 自分なりに暮らしています。 いくつであっても、認知症になってからも 世田谷のまちで、毎日を楽しく、元気に、 自分らしく暮らしつづけられるように。 それを夢物語ではなく みんなでいっしょに実現していくために 世田谷区では、令和2年10月に「世田谷区 認知症とともに生きる希望条例」がつくられました。 これからの日々を あなたが、よりよく暮らせるように、 そして、あなたが暮らす世田谷が ともに暮らしやすいまちになるように。 このガイドをもとに、 いっしょに学びあい、語りあい、 できることからひとつずつ、楽しいアクションに チャレンジしていきましょう。 2ページ このページは、目次となっています。全部で5つの項目に分かれています。 1つ目の項目は、『世田谷区認知症とともに生きる希望条例』についてです。 2つ目の項目は、ステップ1、『知ろう』、というタイトルです。 ステップ1の1、「認知症とともに生きていく日々は」 ステップ1の2、「認知症の特徴ってなに?」 ステップ1の3、「認知症の新しいイメージを」 「暮らしていく経過、人生の旅」 ステップ1の4、「認知症とともに、生きる、支えあう」 ステップ1の5、「地域の中で、広がる可能性」 3つ目の項目は、ステップ2、『考えてみよう、話し合ってみよう』というタイトルです。 ステップ2、「自分はこれから…」 4つ目の項目は、ステップ3、『ちょっと一緒に動き出そう』というタイトルです。 ステップ3の1、「アクションチームで望みをカタチに」 ステップ3の2、「身近な地域で出会おう」 5つ目の項目は、『お役立ち情報』というタイトルです。 「認知症の原因となる病気」、「若年性認知症について」、「世田谷区・東京都・全国の相談先」、「世田谷区認知症あんしんガイドブック」 最後に裏表紙、「私が大切にしたいことメモ」です。 3ページ 「世田谷区、認知症とともに生きる希望条例」を説明します。 おとなでも、こどもでも、誰もが無関係ではないのが、認知症です。ひとりひとりが、希望を持って自分らしく生き、「認知症になってからも、安心して暮らせるまち、世田谷」を実現するために作られました。 この条例では、4つの視点を大切にしています。 1つ目、いままでの認知症の考え方を変える。 2つ目、みんながこの先の「そなえ」をする。 3つ目、ひとりひとりが希望を大切にしあい、ともに暮らすパートナーとして支えあう。 4つ目、認知症とともに今を生きる本人の希望と、あたりまえに暮らせること、(権利・人権)を一番大切にする。 条例をつくる検討委員会では、本人たちが積極的に発言しました。4つご紹介します。 1つ目、「私は代弁者を必要としません。自分の言葉で話す、いまの自分をわかってもらいたい。」 2つ目、「認知症というと、軽い人から重い人までいるので、そこをどう理解してもらえるかが心配です。認知症は同じではない。」 3つ目、「自分が認知症だということを理解するのに、2年から3年かかりました。そして、認知症だっていい、自分自身で生きていくんだと思って、立ち上がりました。この会議に参加したことで、自分の認知症はこれからだな、と思っています。」 4つ目、「『認知症とともに生きる』というところでは、こどもを含めて、ということを強調したいんです。こどもにも認知症について、学ぶ場をつくってほしい。」 そのほかにも、ワークショップやパブリックコメントなどを通して、区で暮らす本人とさまざまな人たちの声がこの条例をつくりあげました。 4ページ タイトルは『認知症になってからも世田谷で暮らし続けるには』です。 本人をはじめ、さまざまな人が認知症を“自分ごと”として考え、自分のこれからの暮らしや大切にしたいこと、やりたいことなどの「希望」を書き留めた「希望のリーフ」を4つ紹介します。 1つ目、「認知症だからってあきらめるんじゃなくて、何かはできる人だから卓球やサッカーをやりたい」と、小学4年生の児童が書きました。 2つ目、「私のことは私が決めたい。今もこれからもずっとおばあちゃんになっても私は私」 3つ目、「好きな人たちに囲まれて、今日を丁寧に生きていく。過去を憂えず、未来を恐れず、今を楽しむ」 4つ目、「いつまでも若い気持ちを持ち続け、体力が衰えてもバランスよく穏やかに過ごしたい」 「希望のリーフ」の紹介は以上です。 本人の思いや希望を聴きながら、その希望を実現するため、ひとりひとりが、考え方をチェンジ!みんなで認知症について、知ろう!語りあおう!つながり、動きだそう! このページの右下には、世田谷区が発行している「世田谷区、認知症とともに生きる希望条例」のパンフレットをご覧になれる二次元コードがあります。 5ページ 『知ろう』、ステップ1の1。 『認知症とともに生きていく日々は。認知症の本人に聴こう、声から学ぼう。』というタイトルです。 本人は、まだ認知症になっていない人たちに、「認知症になってから、どんなことが起きるか」、「よりよく暮らすためには何が必要か」を具体的に教えてくれる大切な先輩です。 まずは、ひとりひとりの声に、耳を澄ましてみましょう。 4人の認知症の本人の声を紹介します。 1人目は、長谷部やすじさん、です。長谷部さんは、 「人生の中でいろんな経験をした。診断後、 間もないころは自分も家族も混乱した。つき合い方がわかり、 いまはとても安定している。自分ができることをしながらひとり暮らしをしていきたい。老人として自立した生活を送ることがモットー」と語っています。 長谷部さんは、退職後、73歳で認知症の症状が現れました。当初は周囲に怒りをぶつける日々でしたが、生活が安定したことで、条例検討委員会でも発言しています。趣味は自宅カラオケで、100点をめざして演歌400曲を熱唱しています。 2人目は、ぬきた、ただよし、さん、です。ぬきたさんは、 「決めつけないでほしい。いちばん大事なのは、 みんなと話し合うこと。家にこもっててはだめ、 どんどん外に出よう。オープンにしよう。この町で楽しく暮らし続けたい」と語っています。 ぬきたさんは、テレビ東京で、多くの番組を制作していました。70歳の頃に「ソファーの後ろからゴリラが見えた」などの幻視が現れ、レビーしょうたいがた認知症と診断されました。講演会での動画出演がきっかけで、認知症施策評価委員会でも積極的に発言しています。 6ページ 3人目は、さわだ、さきこさん、です。さわださんは、 「美術の教師をしていた。定年近くで認知症になったが、なんとか勤めあげた。子どもたちができないことをどうしたら伸ばせるか、ずっと取り組んできた。 周囲はできないと思いこんでいても、できることを支援すると伸びる、自分も同じ。できるだけふつうに暮らしていきたい」と語っています。 さわださんは、小中学校、高校、特別支援学級で30年以上、美術を教えていました。60歳過ぎから授業に困難を感じ、認知症を自覚しました。条例検討委員会では“サポーター”ではなく“パートナー”にと提言しました。 4人目は、はやし、のぶゆきさん、です。はやしさんは、 「複雑なことができなくなる80歳まで、仕事を続けた。その後に、絵をかく楽しさに出会った。夢中でかいている時間が、しあわせなひととき。もの忘れは年々進んでいるが、絵を毎日かいていることが生きるチカラになっている。妻とは仲良く、おたがい笑顔でいたい。」と語っています。 はやしさんは、80歳を過ぎて、ペースメーカーを入れたころから認知症の症状が出始めました。デイケアで臨床美術と出会い、絵をかくことの面白さに目覚め、それが日々の楽しみになっています。 認知症の本人の気持ちを理解するためのポイントとしての、本人の声を紹介します。 私たちにはそれぞれ、自分なりの暮らし方や思いがあります。認知症になってからも、同じです。この4人だけではなく、チャンスがあれば、誰だって、自分なりの体験と、思いを伝えることができます。無理と決めつけたり、本人抜きで進めずに、 どんなときでも「本人の声を聴くこと」、「本人が自分なりの思いを伝えること」を、世田谷のあたりまえにしていきましょう。 7ページ 『知ろう』、ステップ1の2。 『認知症の特徴ってなに?「自分ごと」として、生活や地域の大切さを知ろう。』というタイトルです。 認知症とは、脳の病気やさまざまな原因によって脳の働きが低下し、 日常生活や社会生活を送るうえで支障がでてくる状態、つまり、暮らしの障害のことです。 としをとれば、 誰でも認知症になる可能性があります。 また、認知症の原因となる病気は、70種類以上もあります。種類によっては、治癒が可能なものもあります。 決めつけたり、悩まず、「今までと違う」と感じたらできるだけ早く、 話し合える、かかりつけ医や地域の関係者と、よりよい暮らし方について相談してみることが大切です。 詳しくは、23ページ目をご参照ください。 世田谷区の状況について説明します。 2024年時点、世田谷区の人口は約92万人です。 世田谷区における65歳以上の認知症の人は、2024年現在、 2万6千人です。2040年には、推計値3万6千人と年々増加する見込みです。将来、あなたもそのひとりになるかもしれません。 なお、65歳未満で認知症を発症する人もいます。 8ページ 『知ろう』、ステップ1の2、の続きです。 認知症を捉えるポイントは、認知症の症状は周りの環境で大きく左右される、ということです。 認知症の症状を大きく2つに分けると、中核症状と、行動・心理症状(BPSD)があります。 中核症状では、判断力の低下、記憶障害、場所や時間がわからなくなる見当識障害、仕事や家事を順序立ててできにくくなる実行機能障害、話を理解したり、話すことが難しくなるといった症状があります。 ストレスの多い環境で暮らしていると、ストレスに耐えきれず、大声を出したり、うつ状態になる、意欲がなくなる、おこりやすい、落ち着きなく歩き回る、暴力的な言動、いらだつといった、環境の影響から生じる症状につながります。これらの症状を行動・心理症状(BPSD)と呼びます。 一方、本人が暮らしやすい環境だと、これらの症状は現れにくくなります。 病気や症状だけを見ないで、本人がよりよく生きていけるように、暮らしやすい環境を一緒につくりましょう。 認知症について考える際、5つのポイントがあります。 1つ目、元気なときも、なってからも、みんなでそなえましょう。 2つ目、認知症は誰にでも起こりえますが、リスクを減らすいくつかのポイントがあります。詳しくは、16ページ目をご参照ください。 3つ目、少しずつ始まり、長い経過をたどっていきます。 4つ目、生活をする上で、支障が増えていくけれど、自分はいつまでも自分。その誇りと安心が、心身の安定につながります。 5つ目、できないと決めつけない。本当はたくさんのチカラがあります。 9ページ 『知ろう』、ステップ1の3。 『認知症の新しいイメージを。古いイメージからチェンジできると、おたがいの可能性が広がる。』というタイトルです。 ここでは、ページ見開きにわたり、認知症の古いイメージ、オールドカルチャーから、新しいイメージ、ニューカルチャーへチェンジしていこうというメッセージが記載されています。 認知症の「古いイメージ」とは、 1、他人ごと。自分には関わりがない。目をそらす。 2、本人はわからない。できない。何も話せない。本人の声を聴かない。 3、おかしな言動で周囲が困る。医療がなんとかしてくれる。 4、本人が決めるのは、無理。まわりが決めてあげるのが当然。 5、地域で暮らすのは無理。恥ずかしい、隠す、遠ざける。 6、支援してあげる。本人は支援される一方。 7、暗い、萎縮、あきらめ、絶望的。 認知症の「古いイメージ」は、 悪循環におちいり、お互いが暮らしにくくなってしまいます。 10ページ 『知ろう』、ステップ1の3、の続きです。 認知症の「新しいイメージ」とは、 1、自分ごと。自分にも関わりがある。そなえる。 2、本人なりにわかる。できることがある。配慮があれば話せる。声を出せる。本人の声を聴く。 3、言動のワケがある。一番困っているのは本人。医療まかせにせず、みんなで一緒に暮らしを楽に。 4、本人が人生の主人公。本人なりの思いがある。自分で決められる。 5、地域で暮らし続けられる。自分は自分。堂々とオープンにして地域でともに。 6、本人が自分のチカラを活かして活躍する、支え合う。 7、楽しく、のびのびと。あきらめず、希望をもって。 認知症の「新しいイメージ」は、 良循環が生まれ、おたがいが暮らしやすくなります。 認知症基本法にある「新しい認知症観」とはなんでしょうか? 認知症になったら何もできなくなるのではなく、できること・やりたいことがあり、住み慣れた地域で仲間とつながりながら、希望を持って自分らしく暮らし続けることができるという考え方です。認知症の方も含めた「共生社会の実現」を進めるチカラになります。 11ページ ページ見開きにわたり、『暮らしていく経過(人生の旅)』を説明します。 自分らしく生きてきた途上で、認知症が始まります。人生のゴールまで、長い旅路をたどります。 経過としては、認知症発症後、生活の支障が増える時期、全身状態が低下する時期を経て、人生のゴールを迎えます。20年以上の経過をたどる場合も少なくありません。 認知症についての新しいイメージを、暮らしている地域で多くの人が持っているかどうかで、認知症になってからの経過(人生の旅路)が大きく変わってきます。 『本人の状態』も、認知症の新しいイメージをみんなが持てる地域で暮らしている場合と、認知症の古いイメージのままの地域で暮らしている場合では、大きく変わります。 認知症の新しいイメージをみんなが持てる地域で暮らしている場合、認知症の進行は、人生のゴールまで緩やかなカーブを描いていくことができます。一方、認知症の古いイメージのままの地域で暮らしている場合、認知症を発症し始めた頃から状態低下のカーブを描くことがあります。 どの段階でもあきらめず、より良い状態で暮らせるようにしましょう。 次に、『これからの暮らし方』を4つの時期に分けて、説明します。 1つ目、「自分らしい暮らし」ができている時は、元気なころから出会い、知り合い仲間を増やしましょう。 2つ目、「認知症発症、生活の支障が増えてきた」ときは、変化や生活のしづらさに早く気づき、地域で支えあいましょう。 3つ目、「全身状態が低下してきた」ときは、地域で暮らし続けることを専門職や仲間と一緒に支えあいましょう。 4つ目、「人生のゴール」では、さいごまで自分らしく生ききる、日々を専門職や仲間と一緒に支えあいましょう。 12ページ 11ページに続き、『暮らしていく経過』について説明します。 認知症になってからも、 よい経過をたどれるようになるには、 区内で暮らし、働く、さまざまな立場や世代の人たち、そして区内にいるさまざまな専門職のチカラが必要です。 地域で出会い、 つながり、 語り合いながら、新しいイメージをいっしょに積み上げていきましょう。 『地域とのつながり』としては、 家族、親戚、職場、友人、地域の人々、子どもたち、商店、町内会、民生委員、ボランティア、企業、交通機関、金融機関等、大切な地域生活の仲間、パートナーとして、一緒に、楽しく、つながりつづける。 また、認知症カフェ、本人交流会、家族会、各地区のアクションチーム等で、出会い、つながり、語りあい、一緒に活動する場や機会を設ける。 そのほか、行政やあんしんすこやかセンターなどの福祉の相談窓口、医療機関関係者、介護事業所関係者、権利擁護関係者、成年後見センター等とも早い段階から関わり合い、認知症の新しいイメージを共有しましょう。 このページの右側には、世田谷区の様々なサービスについて紹介している「認知症あんしんガイドブック(認知症ケアパス付き)」をご覧になれる二次元コードがあります。 13ページ 『知ろう』、ステップ1の4。 『認知症とともに生きる、支えあう。新しいイメージを大切にしながら、自然体で自分らしく。』というタイトルです。 実際に認知症になってからも良い経過をたどりながら生活している認知症の本人と、地域の人たちの声を掲載しています。 1つ目、『元気なころからいっしょに、そなえる』の項目では、 地域の集まりで、 認知症の新しいイメージを知り、 みんなで話し合っています。 自分らしく暮らしていくために大事に続けたいことや、 望みを一人ひとりが書きとめています。 地域の人たちは、 「『認知症になりたくない』ではなく、 なっても安心して暮らせる地域にしよう。」と話します。 また、 「おたがい、 認知症になってもよろしくね。」と話す人もいます。 2つ目、『変化がみられたらオープンに、つながりを豊かに』の項目では、 「なにか変、いままでと違う」と感じ、受診をしたら認知症と診断されたので、話し合っていた地域の仲間にオープンにしました。 地域の人たちは、 「伝えてくれてありがとう。」や、 「これまでどおり、楽しくやっていこうよ!」と話します。 本人は、 「うれしい。私なりにできることを続けていきたい。」と話します。 これまでどおりのつき合いや趣味を続け、地域に出かけていく中で、介護や医療の専門職の人との出会いもあり、つながりが広がっていきます。 14ページ 『知ろう』、ステップ1の4、の続きです。 『医療や介護を利用しながら、地域で活躍、楽しい日々を』の項目では、 少しずつできないことが増え、家族を解放したいという思いもあり、自分で選んで介護サービスを利用し始めました。サービス利用日以外は今までどおり、地域の仲間と楽しく過ごしています。 地域の人たちは、 「地域のカフェの大事なひとり。教わることの方が多い。」と話します。 本人は、 「仲間がいて、いっしょに働けて、楽しい。」と話します。 また、自分の体験や思いを住民やこどもたち、若者に伝えています。 本人は、 「認知症になったけど、私は私。楽しいこともいっぱいある。」と話します。 『人生の実りのステージ、地域でともに、 自分らしく』の項目です。 言葉が少し出にくくなったけど、地域のなじみの人が会いにきてくれると、とてもイキイキしています。ゆっくり、ゆたかな言葉が出て、その日は食事も進み、ぐっすり眠れるようです。 地域の大好きな場所に、出かけ続けています。地域の仲間や介護の職員と、お互い気持ちよく、しあわせなひとときを過ごします。 ステップ1の4のポイントは、次のとおりです。 こんな生き方・支えあい方ができる時代になっています。ひとりでも多くの人が、元気なころから地域でつながり、自分らしく暮らし続けられるアクションをいっしょに取り組みましょう。 15ページ 『知ろう』、ステップ1の5。 『地域の中で広がる可能性。つながりあって、楽しく、いっしょに、ともに自分らしく。』というタイトルです。 「いっしょにいる」という場面では、お買い物やおしゃべり、公園を散歩、ちょっと立ち話があります。 「役に立ちたい」という場面では、登下校のあいさつ運動、地域食堂、学校や保育園等の木工品づくりといった大工仕事があります。 「楽しむ」という場面では、絵画、読書、カラオケ、スポーツ、ハイキングがあります。 これらの場面を参考に、元気な時から、楽しい活動や誰かとつながる習慣を、住み慣れた地域で作りませんか。認知症になってからも、いろんな出会いがあると、自分のチカラがよみがえったり、新たなチカラが伸びていきます。 16ページ 『知ろう』、ステップ1の5、の続きです。 自分らしく暮らしていくためのポイントとして、次の4つのリスクを避けましょう。 1つ目、社会的孤立、うつ。 2つ目、難聴や視力低下など周囲の情報が入りにくい状況。 3つ目、高血圧や糖尿病、高コレステロール、肥満など。 4つ目、喫煙や過度な飲酒。 以上の4つのリスクは、医学雑誌「ランセット」常設委員会の2024年報告書から引用しています。 1人で抱え込まず、早めに相談をしましょう。 17ページ 『考えてみよう、話し合ってみよう』、ステップ2。 『自分はこれから…。自分ごととして考えてみよう。誰かと話してみよう。』というタイトルです。 ステップ1の「知ろう」を通じて、あなたは、どんな感想を持ちましたか?思っていることを、ありのままメモしてみましょう。 まず、認知症についての自分なりのイメージを記録してみましょう。 認知症についての自分なりのイメージが、 この先の自分の暮らし、そして家族、地域の人たちとの関わりを大きく左右します。この機会に、自分の認知症のイメージを、新しいイメージに切り替えていきましょう。 18ページ 『考えてみよう、話し合ってみよう』、ステップ2の続きです。 自分だけで考えこまず、誰かとちょっと話してみましょう。 古いイメージに引きずられがちですが…、あなたから、新しいイメージを伝え、前向きに話し合える仲間を増やしていきましょう。 自分が、これからも大切にしたい暮らし方は、なんですか。 続けたいこと、やりたいことといった、私の望みを記録してみましょう。 「これからも、こんなふうに暮らしたいなぁ」「こうだといいなぁ」など、自分の望みを、できるだけ具体的に考えてみましょう。 いま、書いておくことがのちのち、とても役立ちます。 自分の望みを考え、誰かに伝えてみることが、これからの「そなえ」として大切な一歩です。 19ページ 『ちょっと一緒に動きだそう』、ステップ3の1。 『アクションチームで望みをカタチに。 自由に語り合い、楽しく、できることから。』というタイトルです。 1、気軽に集まろう。 知り合い、仲間、まちで働く人、若者、子ども、専門職、本人、その家族、友人に声をかけ、集まってみましょう。 2、思いや希望を語り合ってみよう。 本人の声を聴きながら、これからのため、おたがいのために語り合いましょう。 3、できることを見つけよう。 希望をかなえるために、やってみたいこと、できることは何でしょうか? ひとりではできなくても、アイデアとチカラを持ちよればできることがたくさん見つかります! 4、できることから、アクションしよう! ちいさなことから、まずは、やってみましょう。 動いてみると、次の手がかりがみつかります。 みんながいっしょに、活躍し合い、楽しみながら、アクションを続けていく中で、本人もみんなも元気になっていきます。 動いてみると新たな出会い、つながりが広がります。 20ページ 『ちょっと一緒に動きだそう』、ステップ3の1、の続きです。 活動の実例としては、まちなかの居場所づくり、語り場づくり、地域食堂、懇親会、花植え、草取り、まちの美化、散歩、わがまち探検、宝探し、買い物ツアー、外出サポート、コンサート、絵画、朗読、わかりやすい情報の発信です。その他、それぞれの地域独自の創意工夫を楽しみながら活動しています。 認知症があってもなくても、いっしょに、アクションチームに参加してみませんか? アクションチームは、地域に暮らすさまざまな立場や年代の人が誰でも参加できる気軽な場です。世田谷区内の各地区で少しずつアクションチームの活動が始まっています! 21ページ 『ちょっと一緒に動きだそう』ステップ3の2。 『身近な地域で出会おう。地域の中にいる、さまざまな人とつながろう。』というタイトルです。 1、これまでのつながりを、大切にしましょう。 自分のこれまでの仲間、知り合いと、これからも、つながっていましょう。最近、会っていない人、つながりが切れかかっている人がいませんか?一声かけたり、電話をしたり、ちょっと会いに行ってみましょう。 2、身近な地域に、出会いの場があります! あまり仲間がいない、最近会える人が減ってきた…、それでも、大丈夫! 世田谷区内には、身近なところに、 誰でも気軽に参加できる場があります。 例えば、カフェや集い、体操や教室、地域交流があります。 アクションチームの活動に関心のある方は、地区のあんしんすこやかセンターへお声掛けください。 お住まいの地区のあんしんすこやかセンターの連絡先などは、世田谷区 高齢福祉部 介護予防 地域支援課までお問い合わせください。電話番号は、03-5432-2954です。 22ページ 地域の「希望の木」について説明をします。 認知症の本人をはじめ、さまざまな人が認知症を“自分ごと”として考え、自分のこれからの暮らしや大切にしたいこと、やりたいことなどの「希望」を書き留めた「希望のリーフ」で茂らせた木を「希望の木」と呼んでいます。 1、ひとりひとりの小さな希望を、葉っぱを形どったリーフと呼ばれる色紙に書きます。 自分がこれからも続けたいこと、大切にしたい暮らし方などを記録しましょう。 2、そのリーフを、「希望の木」に貼ります。 3、ひとりひとり、さまざま。そんな中で同じような希望を抱いている人がきっといるはずです。 4、身近な地域で出会い、いっしょに、希望をかなえる楽しいアクションを起こしましょう。 23ページ 『お役立ち情報、認知症の基礎知識』というタイトルです。 認知症の原因となる病気について説明します。 脳の働きを低下させる原因は様々です。 神経変性疾患は、脳の神経細胞の変性が原因で起こります。 アルツハイマー型認知症がもっとも多く、脳にアミロイドベータなどが溜まることで、脳の働きが低下し、記憶障害、見当識障害、実行機能障害などが起こります。 レビーしょうたいがた認知症は、幻視や手足のふるえ、立ちくらみ、歩行障害、動作が鈍くなるなどのパーキンソン症状、睡眠障害が出現します。前頭側頭型認知症は、もの忘れよりも、性格の変化や社会的な常識とは異なる行動が目立つのが特徴です。同じ行動を繰り返すことも多く、難病指定を受けています。 血管性認知症は、脳血管の病気が原因で脳の働きが低下します。脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などにより脳の血流が悪くなり、部位に応じて手足の麻痺や飲み込みの障害などとともに、記憶や判断力の障害などが起こりやすくなります。 そのほか、病気が原因で起こる認知症もあります。神経ベーチェット、多発性硬化症、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、アルコール依存症、ビタミンBワン・B12欠乏症などがありますが、これらは治療などで治る場合もあります。 認知症の症状について説明します。 中核症状は、脳の神経細胞の障害によって、生活していく上で重要な認知機能がうまく働かなくなり、現れる症状です。少しずつ症状が現れ、徐々に進行していきます。症状が現れても、残されている認知機能が多くあります。 認知機能の障害があるとストレスに耐える力が低下し、ストレスに耐えきれず、行動・心理症状(BPSD)が現れる場合があります。認知症の人全員に症状が現れるわけではありません。症状が現れた場合でも、ずっと生じているわけではありません。 認知症を相談できる医療機関を紹介します。 まずは、普段の様子を知っている、かかりつけ医にご相談下さい。 世田谷区には、「世田谷区もの忘れ診断地域連携」という、地域の身近な病院と、専門医療機関であるもの忘れ診断ネットワーク病院が連携して、専門的な検査や治療などにつなげる仕組みがあります。 世田谷区内にある、認知症疾患医療センターとして、地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立松沢病院、認知症疾患医療センターがあります。代表電話番号は、03-3303-7211です。 24ページ 『お役立ち情報、認知症の基礎知識』の続きです。 65歳未満で発症する認知症を「若年性認知症」といいます。 本人が働き盛りであり、就学期の子どもがいる場合も多いため、 仕事や経済的な問題、人間関係、育児・家事に関する困難、子どもたちなどのこころへの影響が、大きな悩みとなります。 高齢者の場合に比べ、家族や周囲も、病気への理解や受容に時間を要します。経済的な問題を含め、本人の不安が大きく、抑うつ状態になる場合もあります。 若年性認知症の人が安心して暮らすためには、次のことが大切です。 働き続けることができれば、経済的な不安を抑えることができます。また、働くということは、社会的役割を果たしているという自己肯定感にも繋がります。 若年性認知症の人が働き続けるためには、本人を支える職場の理解が不可欠です。また、部署や労働時間を調整しながら、残された能力や経験を活かして同じ職場で働き続けたり、就労継続支援事業所で働いている人もいます。 発症初期から適切な支援を受けるために、東京都若年性認知症総合支援センターに在籍する「若年性認知症支援コーディネーター」や、あんしんすこやかセンターに相談することが重要です。 若年性認知症に関する相談窓口として、4つ紹介します。 東京都若年性認知症総合支援センター、電話番号は、03-3713-8205です。 東京都多摩若年性認知症総合支援センター、電話番号は、042-843-2198です。 若年性認知症コールセンター、電話番号は、0800-100-2707です。 若年認知症サポートセンター、電話番号は、03-5919-4186です。 このページの右下には、若年性認知症のかたが利用できる制度などを掲載した「若年性認知症のかたへ」というパンフレットをご覧になれる二次元コードがあります。 25ページ 『お役立ち情報、世田谷区』というタイトルです。 世田谷区の総合支所、あんしんすこやかセンター、相談窓口を案内しています。 認知症に関する、様々な相談は、お住まいの地区のあんしんすこやかセンターへご相談ください。 各あんしんすこやかセンターの連絡先などは、世田谷区 高齢福祉部 介護予防 地域支援課までお問い合わせください。電話番号は、03-5432-2954です。 地域、仲間とつながる情報として、認知症カフェ、介護者の会・家族会、認知症本人交流会があり、このページには、それぞれの内容を紹介した世田谷区認知症在宅生活サポートセンターのホームページの二次元コードを掲載しています。 認知症カフェ、介護者の会・家族会、認知症本人交流会などの相談、お問い合わせについては、世田谷区認知症在宅生活サポートセンターまでお願いします。電話番号は、03-6379-4315です。 26ページ 『お役立ち情報、全国・東京都』というタイトルです。 認知症のご本人とご家族のためのホームページを3つ紹介します。 1つ目、厚生労働省の認知症本人大使「希望大使」のホームページでは、希望の道という全国各地で暮らす本人の動画も配信されています。 2つ目、認知症本人の全国組織として、一般社団法人、日本認知症本人ワーキンググループがあります。 3つ目、認知症の人と家族の全国組織として、公益社団法人、認知症の人と家族の会があります。 このページには、それぞれの内容を紹介した、各ホームページの二次元コードを掲載しています。 次に、世田谷区が発行している、認知症あんしんガイドブックについて紹介します。 認知症あんしんガイドブックとは、認知症について知りたいかた、「認知症かな?」と思っておられるかた、認知症と診断されたかたやそのご家族などに向けて、認知症に関するさまざまな情報を掲載している冊子です。 相談や受診、暮らしを支えるサービスなど、世田谷区の認知症に関する情報を掲載している、認知症ケアパス付きの本冊。 認知症の本人の声が多く掲載され、手に取った人が勇気づけられる内容の別冊。 認知症に関する相談先やサービスに関する情報をまとめて掲載した資料編。 以上の、3冊構成です。 このページの右下には、「認知症あんしんガイドブック」をご覧になれる二次元コードがあります。 最後のページ、裏表紙 『私が大切にしたいことメモ』を説明します。 あなたが大切にしたいと思うこと、一つひとつが希望の種になります。 具体的なことを記録しておきましょう。誰かに伝えたり、話し合ってみましょう。今、記録しておくと、のちのち役立ちます。 それでは、日付を記録したうえで、 あなたが大切にしたいことをあげてみましょう。 1、楽しみ・好きなこと 2、好きな食べ物 3、好きな音楽 4、行きたいところ 5、大切な人 6、大切なもの 7、大切な思い出 8、これからも続けたいこと 9、これからやってみたいこと また、あなたが大切にしたいことも自由に記録してみましょう。 この冊子は、世田谷 認知症とともに生きる、みんなでアクションガイド、世田谷区アクション講座、世田谷版認知症サポーター養成講座用テキストです。発行は世田谷区、高齢福祉部、介護予防、地域支援課、 お問合せは、世田谷区、認知症在宅生活サポートセンターまでお願いします。 電話番号は、03-6379-4315、FAX番号は03-6379-4316です。 最後までごせいちょういただき、ありがとうございました。