認知症講演会<br>「認知症になってからも希望の持てる社会へ」~認知症とともに生きる人の声を聴く~<br>開催報告!!

認知症講演会
「認知症になってからも希望の持てる社会へ」~認知症とともに生きる人の声を聴く~
開催報告!!

2020年12月21日

令和2年12月2日、 認知症講演会(後期)を三茶しゃれなあどホールで開催いたしました!
講演会は、認知症の基礎知識についての講義と特別対談の2部構成で行いました。当日、ご参加できなかった方のために、講演会と対談の内容をご紹介いたします。

[認知症講演会]認知症になってからも希望の持てる社会へ

■講師
  遠矢 純一郎 氏(世田谷区認知症在宅生活サポートセンター 医師)

桜新町アーバンクリニック院長

総合内科専門医、日本在宅医療連合学会指導医、スウェーデン・カロリンスカ医科大学 認知症ケア修士
1992年鹿児島大学医学部卒業。大学病院・公立病院などの勤務を経て、
2000年用賀アーバンクリニック副院長。2004年から在宅医療に取り組み、2009年より現職。
世田谷区を中心に家庭医、在宅医として地域医療や認知症ケアに携わっている。


今回の講演会の内容

高齢化とともに増えている認知症は、これまで「何も分からなくなるひと」「自分ではなにもできないひと」という捉えられ方をされて、社会から隔絶されたり、諦め、孤立、絶望感という状況に陥ることが少なくありませんでした。認知症による記憶力や認識力の低下により、できないことも増えていきますが、できることやわかること、感じることもたくさんあります。周りの方の理解や支援、環境の調整など、ちょっとしたサポートがあれば、自立を維持することも可能になります。できないことばかりに目を向けるのではなく、できることを活かしていけるような関わり方を意識してみましょう。


●皆さんへのメッセージ

この10月より「世田谷区認知症とともに生きる希望条例」が施行されました。認知症になっても希望の持てる世田谷の実現には、区民のみなさんの理解と協力が欠かせません。高齢になると誰にでも起こることなので、我が事として考えていきましょう。

 

[特別対談] 認知症とともに生きる人の声を聴く

認知症当事者の長谷部氏と娘さんをお招きし、世田谷区認知症在宅生活サポートセンター遠矢純一郎医師との対談を行いました。
今を楽しく生きる長谷部さんと娘さんとの日々の生活、認知症になってからの出来事などを話してもらいました。

■登壇者
 遠矢 純一郎 氏(世田谷区認知症在宅生活サポートセンター 医師)
 長谷部 泰司 氏(認知症とともに生きる人・元大手小売業経営者)、娘さん

長谷部 泰司 氏
・元大手小売業経営者
・5年前に大阪から世田谷区へ
・認知症とともに生きる希望条例の委員会に当事者として参加
・現在は、娘さん、ヘルパーなど周囲の人の手も借りながら生活をされている


■長谷部さんの今を楽しく生きる秘訣

①老人の生活に楽しみを見つけたい

健康が大事!!
カラオケを楽しみにしています。
調子が良いときは100点がでます。体の調子が悪いと点数も悪くなるのです。


②一人暮らしを楽しむ

毎日、歌を歌い、自由に暮らしています。
最初は、老人の一人暮らしは大変だと思っていました。
家族やヘルパーさんに自分ができないことを委ねてしまえば、心に余裕がでてきます。

お金のことは、娘に管理してもらっています。
自分で管理していた時は、なくしてしまったこともあります。
もの忘れで、思い出せないことは、お任せすることも必要です。


③許す、感謝の気持ちを大切にする

家族に対して、ヘルパーさんに対して、誰に対しても感謝する気持ちを大切にしています。
周囲に迷惑をかけないようにしています。

<娘さんより>
5年半前に大阪から世田谷区に引っ越してきました。
父が大阪で一人暮らしをしていた時は、片付けができず、家も座る場所がない状況でした。
待ち合わせの約束をしても、場所も時間もわからないこともありました。
世田谷に引っ越した後も、暴言をはいたり、揉めることも多々ありました。
でも、ケアマネジャーさんや先生、皆さんの力を借りて、今は落ち着いた楽しい生活ができています。

 

質疑応答 (回答:遠矢医師)

Q.認知症って、診断してもらうべきですか?

A. 認知症には、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症、レビー小体型認知症などいくつかの種類があり、それぞれ症状や経過が異なります。また慢性硬膜下血種、栄養障害、脳炎、甲状腺機能低下症といった疾患によっても認知症状をきたすことがあります。 これらは、元の疾患を治療することで治る可能性があります。まずは、かかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医に紹介して頂くとよいでしょう。認知症は長く付き合う病気ですので、身近でなんでも相談に乗ってくれるかかりつけ医が居るとなにかと頼りになります。また今後介護保険を使う必要が生じた場合には、かかりつけ医の診断書(主治医意見書)が必要になります。お近くにかかりつけ医を持たない方は、この機会にぜひ相談なさるとよいでしょう。


Q.家族はどのような心を持つのが良いのでしょうか。

A. ご本人の変化を一番身近で受け止めながら、それをささえていくご家族にも、不安や辛さを感じることが少なくありません。進行性の病気である認知症は、できないことやわからないことが少しずつ増えていくので、周りの方もそれによる本人の不安やストレスを理解しながら、適切な対応をしていくことに難しさを感じることもあるでしょう。一人で抱え込んでいると、大変さを自分で受け止められなくなるおそれがあります。あんしんすこやかセンターに配置されている認知症専門相談員に相談したり、認知症カフェや家族会に参加してみるのも良いでしょう。同じ経験がある方と語り合うと心持ちが変わってくると思います。行き詰まってからではなく、早めに支援者や仲間を持つようにしましょう。


Q.認知症を予防する方法はありますか。

A. 世界中で認知症の予防に対する研究がなされています。それらの医学研究の多くが、 認知症に確実なサプリメントや予防法はないと結論付けています。一方で、運動や和食のようなバランスの採れた食事、そして社会とのつながりを持ち続けることなどは、認知症のリスクを減らすことが判ってきました。住み慣れた地域で、今までの暮らしを続けていくこと、健康的な生活習慣や地域の仲間を持つことが大事です。

 

アンケートより参加者の声

・認知症になれば終わりかなと思っていたのですが、お話を聞いて少し希望も持てるかなぁと感じました。ありがとうございました。

・遠矢先生のお優しい視点を忘れず、母に接していこうと思いました。長谷部さんの「一人暮らしをむしろ幸せに思えたら」というお言葉に、これからの人生も希望を持っていきたいと思います。

・遠矢先生の話が資料と共にわかりやすかった。長谷部さんの話は、老人みんなに言えること。私も高齢で一人暮らし、自立して楽しんでいます。

・長谷部さんのお話は、大変参考になりました。希望を持って介護したいと思いました。

・長谷部様のパワーが素晴らしいです。許す、感謝の気持ちを強く持ち、いつまでもお元気でいてください。参考になりました。
 

スタッフからの一言

今回の認知症講演会では、認知症とともに生きる人、長谷部泰司さんにご登壇いただきました。
遠矢先生、長谷部さん、娘さん、ケアマネジャーの鈴井さんと綿密な打合せを重ね、今回の講演会を無事開催することが出来ました。今回の対談は、元経営者という長谷部さんの強みを生かせた企画だったのではないかと思います。
対談後、同年代の参加者の方たちに長谷部さんと娘さんが、温かい言葉をかけてもらっているのを見て、この講演会を開催することが出来て、本当によかったと感じました。 講演会の実施にご協力いただきました皆様に、改めて感謝を申し上げます。
(世田谷区認知症在宅生活サポートセンター 今村)

 

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